刑事無罪の判決の影−総領事館のサービス向上に向けた意識改善の期待

            

いかなる組織にも、圧倒的多数の誠実なメンバーと、比率にすれば5%に満たないが、不誠実であったり、ぞんざいな振舞いをしたりする少数のメンバーがいます。

私が1996年8月31日の上海赴任を皮切りに中国ビジネスに従事して24年目に入りますが、中国各地に存在する総領事館に相談した様々な案件のうち、90%以上では本当に親切にご対応いただき、相談したこちらの頭が下がる思いであったのに対して、僅か2件の遺憾な事例がありました。

 

1つは大江橋法律事務所のアソシエイトとして上海赴任直後にあった債権回収トラブル案件で、日本人が中国人債権者グループに江蘇省のとある街に連れ去られたという案件です。

 

拉致に等しい蛮行で、クライアントの生命、身体の安全を危惧した私たちは上海総領事館に相談しましたが、残念ながら邦人保護に有益な行動は1ミリも取られず、このままでは埒が明かないと判断された創業パートナーである塚本宏明弁護士が高華鑫律師と共に、自らの危険も顧みずに現地に乗り込み、英雄的行動によりクライアントを無事保護されました。

 

当時の私は中国語もまともに話せず、足手まといになるだけなので、現地には連れて行ってもらえませんでしたが、一方では師匠でもある塚本先生、高律師の勇敢な行動を心から尊敬しながら(お二人は他にも法律家として様々な功績を残されていますが−特に塚本先生は石川正先生と宮崎誠先生と大江橋法律事務所を創業したことが最大の社会的功績の1つだと確信します−、たった1つのこの人命救助だけでも法律家となられた偉大な意義があると思います)、他方では邦人の生命、身体の安全に鈍感極まりない当時の上海総領事館に心からの怒りを覚えたことが思い出されます。

 

そして、もう1つが2019年12月4日のブログで書いた香港刑事無罪事件に関する香港総領事館の対応です。

 

無罪判決を勝ち取った彼が2018年初冬に逮捕され、その後苦労して保釈された後、香港総領事館に相談に行ったそうですが、その際の総領事の対応は日本語のできる弁護士リストを手渡すなどしたほか、「刑期を終えたら、また報告に来てください」だけで、無罪を争う彼をフォローする言動はゼロだったそうです。

 

そして、2019年12月3日の無罪判決を受けて、失効したパスポートの更新のために再び香港総領事館を訪れると、「えっ、無罪になったのですか。そんなこともあるのですね」で、終わり。

 

これでは少なくとも一人の立派な社会人として納税義務を果たしてきた彼は、納税義務に見合った海外における大使館及び総領事館の邦人保護機能はゼロだと確信するでしょう(実際、そう言い続けておられますし、私が過去に大陸の複数の総領事館でお世話になった尊敬する領事が香港総領事館に着任されたので、事情説明に行きますかと尋ねても、無意味だと拒否されるほどに不信感が形成されています)。

 

繰り返しですが、中国各地に存在する総領事館に相談した様々な案件のうち、90%以上では本当に親切にご対応いただき、相談したこちらの頭が下がる思いがしますので、圧倒的多数の総領事館及び領事各位は誠実に、熱心に邦人保護を図ろうとご努力されています。

 

しかし、私の極めて限定された経験に基づくたった2件の事例だけとはいえ、日本国民が有事に直面した際の総領事又は面談した領事が邦人保護意識の極めて低いアホである場合、圧倒的多数の誠実な総領事館及び領事が日々の行動を通じて獲得した信用を瓦解させます。

 

アメリカ合衆国は色々な問題を抱えているかもしれませんが、アメリカ市民が海外で有事に直面すれば、CIAの情報網を活用し、時に外交を通じて、時にアメリカ軍を派遣して軍事力を通じてでも、救出を図ります。

 

様々な歴史的、制度的理由により、日本にそこまでの力がないことにはやむを得ない側面がありますが、せめて、日本国民の納税義務に依拠して生活する全世界の大使館、総領事館に勤務する各位は、それが外務省以外の他省庁から任命派遣される者であるとしても、今一度、邦人保護の重要性を認識し、海外で苦難に遭い、それゆえに何か救済の手掛かりがないかと相談に来る日本国民に対するサービス向上に対するさらなる意識改善を期待したいところです。

 

無罪判決を勝ち取った彼のように、総領事館に無視され、最初の弁護士に到底妥当とは評価し得ない取扱いを受け、ご縁あって最後に私にたどり着くことができ、結果も最善であった幸運な人もいますが、総領事館でのファーストタッチの処理が酷かったために、回避可能な不幸で日本国民の人権が侵害される事例もあり得るのです。

 

全世界の大使館、総領事館に勤務する各位の日本国民に対するサービス向上に対するさらなる意識改善は、必要不可欠だと考えます。

 

外務省の皆さん、何卒、宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

アナ雪2は、中国でも大人気だ。街中には等身大キャラクターが設置され、子供の記念撮影に興じるご家族が後を絶たない。しかし、中国語のタイトルは「冰雪奇缘(氷と雪の奇縁)」。漢字にすると、随分とイメージが異なるな・・・。


以上


■筆者: 村尾龍雄■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト 代表弁護士・税理士
香港ソリシター(LI&PARTNERS(香港)所属)
キャストコンサルティング株式会社 代表取締役
加施徳咨詢(上海)有限公司 監事
加施徳投資香港有限公司 董事
キャストグループ   キャスト中国ビジネス
■東京/大阪/埼玉/上海/北京/蘇州/広州/香港/ヤンゴン/ホーチミン■----------------



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