香港デモは誰の責任なのか?

            

終わりが見えない香港デモは誰の責任なのでしょうか?

可能性のある選択肢として、|羔γ羆(北京)、▲妊發魑こす香港市民、9畊狙府及び香港経済界が考えられますが、私の回答は「香港政府及び香港経済界」です。

 

以下、その理由を述べます。

 

まず、香港デモの責任が中共中央(北京)と思っている人が日本では多いかもしれませんし、もしかすると香港デモ参加者の過半数もそう思っているかもしれませんが、中共中央に香港デモの責任は一切ありません。

 

そう断言するのは私が親中派だからではありません。本当に責任がないからです。このことを理解するには、まず中共中央は大陸でも実は中国人民の不満、不安、怒りを密かに買っているのか?(=そこが中共中央の主戦場ですから、まず主戦場で彼らが支持されているかを知ることは香港との関係を理解するうえで重要です)という疑問に対する答えを理解する必要があります。

 

1、大陸の人々は本当に中共中央を支持しているのか?

 

日本人は誤解している人が圧倒的多数ですが、習近平の国内の人気は一時の熱狂的レベルではないにせよ、今、中国国内(大陸内)で中共中央の支持率をとったならば、どんなに悪いデータでも70%とか80%の支持率のはずで(もっともっと高いかも)、何のデータ操作をするまでもなく、「日本を含む西側諸国におけるいかなる政党も勝てない高い支持率」が得られると確信します(本当)。

 

その理由はとても簡単です−たった2つの質問を任意の中国公民(年齢は40歳以上に限定)にしてみればいいのです(年齢制限は以下の質問との関係です。30歳以上にしたければ、第1の質問の1990年を2000年に変更すればよいだけの話です)。

 

Q1 あなたは1990年の生活と現在の生活のいずれに満足していますか?

 

Q2 もし、現在の生活により満足をしているならば、その手柄は中共中央にありますか?それとも中共中央以外の第三者ですか?

 

1990年の中国公民の1人当たり名目GDPは340USドル程度とアジア最貧国とされる現在のミャンマー、バングラデッシュの5分の1程度、2000年のそれも900USドル程度で60%程度と、2000年以前の中国は本当に貧しい国でした。

 

だからこそ、私が中国法を専門にするために1996年に上海に渡った時点で日本の若手弁護士の誰も中国に興味を持たなかったのです。

 

それが2000年以降、劇的に経済が成長し、2019年の今年の1人当たり名目GDP予想は1万USドルを超える見込みです。

 

1人当たり名目GDPが伸びさえすれば人は満足というわけでは必ずしもありませんが、少なくともド貧乏な国家を一時の流行りにせよ爆買いが揶揄される程度に豊かな国家にしたのは、誰が何と言おうとも中共中央の手柄であり、その経過を知る中国公民の圧倒的多数は中共中央を支持するでしょう。

 

日本で発言する中国人や中国生まれの専門家の多くは、天安門事件で国家を追われる羽目になるなど、最初から中共中央に対する憎悪が出発点になっており、かつ、それが世界的に見れば「ジャーナリスト」とは100%呼ぶことができないかなり偏向したメディア、記者により盲目的に追随された結果、日本人の対中イメージに相当な負の影響を与えていますが、1996年以降、満23年も中国を見て、たくさんの中国人の友人と対話を重ねる中で、中共中央の支持率が高いことだけは私の全信用を掛けて断言してもいいお話です。

 

2、香港市民はなぜ怒っているのか?

 

香港市民が怒っている理由は、表面的には「逃亡犯条例」の完全撤回に香港政府が同意しないからとか、香港市民に不合理な暴力を振るった警察官との信頼関係が破綻したからとか言いますが、そうではありません。真の理由は「1997年7月1日の香港の中国復帰」以降、1人当たり名目GDPは日本を大幅に上回っても、普通の香港市民の暮らしは酷くなる一方だからです。

 

冗談だと思ったら、是非、一度、香港に行って、アパートを借りて住んでみてください。

 

マスコミの方々は、それができないとしても、香港で不動産仲介業を営む会社(例えば上場会社であるスターツ香港)に、日本人がたった1人で決して贅沢ではないが、最低限快適な暮らしができるマンションを借りるには幾らかかるか、聞いてみてください。

 

まあ、1万香港ドル(約14万円)では絶対無理、かなり妥協して相当シャビ―(shabby)なところで1万5000香港ドル(約21万円)はするでしょう。まずまずかなと思えるようなマンションならば2万香港ドル(約28万円)は覚悟しなければなりません。

 

なので、中小企業では香港に駐在員を置くことができないので、どんどん日本人を帰国させる羽目になるので、香港の邦人数が減少の一途をたどることになるわけです。

 

こんな環境であれば、駅近のマンションを買おうとすれば、平気で1000万香港ドル(約1億4000万円)はするのであり、そうであれば弁護士夫婦であれ医師夫婦であっても、子供を持つか(英国式教育を受けさせようとすれば教育費が莫大にかかる)、マンションを買うかの二択を迫られることになっても不思議ではなく、本来、社会の上級層であるべき人々でそうであるならば、一般の香港市民はどうなるか、想像すればすぐにわかるでしょう?

 

私の知人の香港人は、狭いマンション(例えば有効面積50平米)に、28歳の長女と24歳の長男が両親と一緒に住んでいますが、こんな環境では成人した子供のプライバシー保護はゼロ、だからと言って、月額2万5000香港ドル(約35万円)の収入の60%〜80%の賃料を支払ってまで1人暮らしをするかと言えば、そのような不合理ができるはずもなく、結果として「夢と希望に満ち溢れた20代」が子供の頃から変わらないプライバシー保護のない状態に置かれるわけです。

 

そりゃ、圧倒多数の香港市民が日本と比べても表面的に高い名目GDPを誇っても、実際の暮らしが日本人の享受できるものより遥かに厳しいものならば、平素からどこにもぶつけようのない不満、不安、怒りが蓄積しますよね?

 

その結果、蓄積した不満、不安、怒りが香港デモの形をとっている(少なくとも200万〜300万/750万=30%〜40%は滅茶苦茶に不満、不安、怒りをもっている)というわけです。

 

そうすると、香港デモの形で1997年7月1日以降、蓄積した不満、不安、怒りを表出している香港市民は、暴力行為こそ支持できませんが、そのような違法行為を除いては、やはり責任がない(むしろ気の毒だ)、という結論になります。

 

3、中共中央は香港市民の生活を大陸同様に改善する役割を担えたか?

 

1997年7月1日以降、全人代常務委員会が制定した「香港基本法」により「一国二制度」がある以上、中共中央及び中央政府は、直接、香港市民の生活を大陸同様に改善する役割を担うことはできませんでした(そんなことをすると、香港政府が無用の長物になる)。

 

中共中央は、自らの責務の範囲である大陸において、この30年間で高い支持率が得られるだけの仕事を実施してきたのであり、それを「一国二制度」の壁により香港で直接展開することができなかったことをもって責任を認めることは一切できない、がフェアな回答です。

 

4、そうすると、結局、誰の責任か?それはなぜか?

 

そうすると、消去法的思考により、全責任は香港政府及び香港経済界にあるのではないか、との予想が立ちます。そして、それは大正解です。

 

その本質は、香港経済界は、あり得ないほどのお金持ちの癖に、それ以上なおも儲けるだけ儲けて、これを自社の従業員の生活改善を本気で図るために積極的に使わず、ただ家族だけを大事にする(相続税もない中で、何代にもわたって、大金持ちが大金持ちであり続ける)という、マルクス、レーニン、毛沢東主席が生きていたならば、これこそ革命をもって打ち負かすべき「悪しき資本家」であると断じたかもしれない醜い要素をたくさん持っている、と思わずにいられません(本当に、本当に、醜い)。

 

そして、香港政府はそのような「悪しき資本家」である香港経済界ばかりを大事にし、1人1人の香港市民の生活を大事にすることなど、ほとんど考えていないように見えます。

 

例えば香港で先に挙げたとおり、成人の兄弟姉妹が狭い家で両親と住み続け、プライバシーのかけらもない状況に置かれるのはなぜですか?

 

香港市民が普通に働けば手に入る年収の3倍から5倍のマンションを駅近でドンドン香港政府が(例えば10年とか15年の厳格な転売制限を付したうえで)売り出せば、大手ディベロッパーが継続的に得ている恥ずべきほどの莫大な不動産収入が減少したり、その株価が下落したりするからでしょう?

 

結局、香港政府とは「千数百人の香港経済界のオーナーの、恥ずべきほど多額の利益を守るために、数百万人の香港市民の普通の生活を犠牲にすることに一切躊躇しない政府である」と定義することができます。

 

中国憲法前文が指導原理とする「マルクス・レーニン主義」と「毛沢東理論」を香港に適用し、なぜ、今、香港デモが起きているかを冷静に考察するとき、「悪しき資本家」及びその利益のみを重視し、大陸で実現した「普通の人民の普通の暮らし」を軽視し続けた香港政府が1997年7月1日以降、展開してきた誤った政策、後手に回った政策のツケが一気に噴出したのが「香港デモ」という形なのだ、と理解すれば、腑に落ちます。

 

だとすれば、今こそ打つべき答えは、中共中央が社会主義市場経済誕生(1992年)を契機として、30年近くをかけて実現した「小康(ややゆとりのある)社会の全面建設」を模範として、香港政府が過去22年の誤った香港経済界との癒着に立脚する政策を猛省したうえで、香港で実現することこそ、時間はかかるけれども、唯一の香港政府と香港市民との和解への可能性だ、と思います。

 

年間GDPの3倍規模のお金を持っている香港政府が一市民平均当たり3万円程度にすぎない2600億円ポッキリのバラマキ政策を打ったところで、22年の積年の不満、不安、怒りは解消するはずがありません。

 

毛沢東主席が正しい工作態度として掲げた「实事求是(事実に基づいて真実を求める)」(=香港市民の蓄積した不満、不安、怒りの本質は失われた「普通の暮らし」にこそある)に基づいて、「向中共中央学習(中共中央に学び)」、香港で時間がかかろうとも香港の経済水準に応じた「小康社会の全面建設」をせよ−それこそが香港と香港市民が救われ、香港市民が中国人であることを誇る契機となる唯一の和解的アプローチである、と信じます。

 

あろうことか、社会主義国である中国の一角を占める香港で、これ以上ないほどに醜い資本主義の悪弊が蔓延ったままに放置した中で真の普通選挙を導入しても、それこそ香港独立という馬鹿げた国家分裂運動の契機になるだけだ、と思います。

 

香港政府は、「香港基本法」上容認された資本主義体制とthe Court of Final Appealを頂点とする「法の支配」を維持し、香港の明るい未来を切り拓きたければ、中国の特色ある社会主義の長所を真剣に学び、「悪しき資本家」ではなく、普通の香港市民に真剣に寄り添い、香港市民の「普通の暮らし」のために奮闘努力してみろ、と心から言いたいところです。

 

そして、香港政府の誤った政策のツケを、香港デモ参加者に自宅を突き止められ、家族が酷い目に遭わされることはないか、戦々恐々の心中に日々悩む香港警察職員に背負わせるのは止めろ、とも(香港デモに参加する香港市民も、1人1人の警察官の圧倒的多数は大事な家族を持つ善良な香港市民であることに気づけ!と言いたいところです。こういう場面では、警察官は損な役回りを引き受けざるを得ないのは、今昔、洋の東西を問わない事実です)。

 

 

そんなこと言っても、昔のコマーシャルではないが、「臭いにおいは元から断たなきゃダメ」だと思う。せっかく、必死の思いで香港ソリシターにまでなったのだから、香港政府と香港市民がしっかりと和解して、世界に誇れる香港にしてくれ。俺も永久IDを持つ一香港市民だ。争いなど百害あって一利なしだ。争いごとが地球上からなくなれば、即時失業する弁護士が言うのだから、間違いないぞ!

 

以上


■筆者: 村尾龍雄■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト 代表弁護士・税理士
香港ソリシター(LI&PARTNERS(香港)所属)
キャストコンサルティング株式会社 代表取締役
加施徳咨詢(上海)有限公司 監事
加施徳投資香港有限公司 董事
キャストグループ   キャスト中国ビジネス
■東京/大阪/埼玉/上海/北京/蘇州/広州/香港/ヤンゴン/ホーチミン■----------------



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