日本の保険、中国の不動産−国家がいかなる海外投資を制約するかで、その国家のアキレス腱が見えてくる

            

日本は保険業法第186条において日本の居住者を被保険者とする日本では存在しない有利な保険を日本に支店等を設けない外国保険業者から購入することを原則として許しません。少し長いですが、次に条文を示しておきます。

(日本に支店等を設けない外国保険業者等)
第百八十六条 日本に支店等を設けない外国保険業者は、日本に住所若しくは居所を有する人若しくは日本に所在する財産又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に係る保険契約(政令で定める保険契約を除く。次項において同じ。)を締結してはならない。ただし、同項の許可に係る保険契約については、この限りでない。
2 日本に支店等を設けない外国保険業者に対して日本に住所若しくは居所を有する人若しくは日本に所在する財産又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機に係る保険契約の申込みをしようとする者は、当該申込みを行う時までに、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。
3 内閣総理大臣は、次の各号のいずれかに該当すると認められる場合には、前項の許可をしてはならない。
一 当該保険契約の内容が法令に違反し、又は不公正であること。
二 当該保険契約の締結に代えて、保険会社又は外国保険会社等との間において当該契約と同等又は有利な条件で保険契約を締結することが容易であること。
三 当該保険契約の条件が、保険会社又は外国保険会社等との間において当該契約と同種の保険契約を締結する場合に通常付されるべき条件に比して著しく権衡を失するものであること。
四 当該保険契約を締結することにより、被保険者その他の関係者の利益が不当に侵害されるおそれがあること。
五 当該保険契約を締結することにより、日本における保険業の健全な発展に悪影響を及ぼし、又は公益を害するおそれがあること。

 

海外では5%〜7%の利率で安定的に運用可能な保険商品がゴロゴロしていて、解約返戻金が期間経過に応じて2倍、3倍以上になるものが普通に存在していますが、日本ではそのような保険商品は基本的に存在しません。

 

そのような規制をかける理由は何かと考えますと、要するに国の借金総額を上回る1800兆円余りの日本国民の家計資産残高が日本国内にとどまることで、永遠に達成できないし、するつもりもないプライマリーバランスが崩れた状態で、赤字国債を発行しまくりの無秩序国家予算運営を続けても、日本円の信認をなお維持することが可能であるところ、日本国民が日本の保険を見限り、極めて有利な海外の保険を自由に購入できるようになると、その前提が崩壊し、国家的危機を招来する可能性があるからだと考えられます。

 

なので、海外の保険が上記保険業法第186条第3項第1号から第4号をすべてクリアする適法かつ素晴らしいものであったとしても、圧倒的多数の日本国民が素晴らしい運用成績を誇り、また相続税対策としても完璧な海外の保険を次々に購入することになると、国家的危機が生じるので、同項第5号が規定する「当該保険契約を締結することにより、日本における保険業の健全な発展に悪影響を及ぼし、又は公益を害するおそれがある」という理由で内閣総理大臣が許可を付与しない可能性があるように思われます。

 

結局、日本円の信認は、日本国民の優れた海外保険商品を購入するという財産権行使の自由を公益の名のもとに制約し、その犠牲のうえに立脚しているとの見方が成り立つところです(海外事情に精通しない日本語オンリーで、日本にしか住んだことがない、働いたことがない、海外赴任経験があっても、投資や運用に興味がない日本人が圧倒的多数を占め、合理的経済人モデルからすると、絶対にあり得ない金利がほぼゼロの預貯金をし、海外の保険と比較すると、滅茶苦茶に損な日本の保険を購入する謎の行動に支えられているとの見方もできるかもしれませんが)。

 

そして、海外事情への全国民的無知に人々が気づき、「年金支給が遅らされ、しかも老後資金が2000万円、3000万円必要だと言いながら、ほとんどゼロ同然の利回りしか確保できない日本の保険商品に私たちを縛り付けるのはやめてくれ」という国民的叫びが巻き起こり、実際の行動が次々に起こるとき、日本円と国債は断末魔を迎えるかもしれません。

 

一方、中国は、過去から中国公民が海外の不動産を購入するために人民元を外貨に換えることを一切認めません。

 

それでも「上に政策あれば、下に政策あり」のお国柄を反映して、1人当たり年額5万米ドルまでは人民元を外貨に換えるのに規制が緩いので、例えば親戚縁者、友人の名義を20人分集めて、100万米ドル分を換金して、これを異なる名目で海外送金することにより、海外不動産を購入する例が多数存在しました。

 

こうした違法行為について、2016年末にまずそうした行為が「外貨管理条例」等に違反することを明確にする行政法規が登場し、2019年2月1日には1998年に既に登場していた古い最高人民法院の司法解釈(=特定の法律に関する有権的解釈を明らかにする法源)に加えて、そうした行為が不法経営罪として刑法犯になることを明確にする最高人民法院、最高人民検察院の司法解釈が登場しました。

 

なぜ、刑法犯による萎縮的効果まで利用して中国がそんなことをしなければならないのかですが、次の理由によります(少し長いです)。

 

すなわち、朱鎔基国務院総理(1998年3月〜2003年3月)の指導の下で、国有企業の経営改革を図る一環として、1998年6月30日限りで「分房」と呼ばれる住宅無償支給制度という行き過ぎた福利厚生制度を廃止し、外資系企業同様、住宅積立金制度に移行を図る「物から金へ」の住宅改革を契機として、^貎佑短劼任△觧匐,量ね茲里燭瓩法△修靴騰不動産を貯蓄代替とみなす国民性より、都市部では誰もがこぞって不動産購入に走った結果、不動産価格が上海などでは10年余りの間で20倍、30倍に上昇しました。

 

その取引事例比較法的効果で、周辺の不動産価格は何もかもが上昇し、それが地方政府の錬金術を構成してきました。

 

換言すれば、1992年の社会主義市場経済導入当時の中国の個人GDP(423.03USドル)が僅か四半世紀で20倍以上(2018年9,608.42USドル)に押し上げた最大の立役者は、都市部における異常な不動産価値上昇にあったわけです。

 

江沢民が事実上院政とまで言いませんが、多大な影響力を残した胡錦濤・温家宝時代(2002年11月〜2013年3月)を通じて一貫した、政治的批判を回避するための有効手段である経済発展至上主義を支えた中核的要素が不動産価値上昇であったのですから、その上昇速度を阻み、それどころか下落可能性を惹起する海外不動産投資を認めるなどもってのほかという発想が支配的であったのもうなずけます。

 

その発想は現在でもなお支配的ですが、従前は海外不動産投資が許されていた企業にまでこれが原則許されなくなった2017年以降、厳格化の一途をたどっている社会的背景は、少し変化しています。

 

すなわち、2015年夏の中国経済危機(2014年11月22日の法定基準金利引下げを嚆矢として、数次にわたる引下げが中国人民銀行の中国版金融緩和政策の具体化であるとして、A株市場が一気に上昇気流に乗り、2000ポイント台から一気に5000ポイントを超えるほどの株式急上昇を描いた後、一気に3000ポイント前後まで急落した現象を中核とする)を契機として、破竹の勢いであった中国経済に対する世界的懐疑が広がり、2005年7月21日の1米ドル=8.3人民元を8.1人民元まで事実上引上げをして以来、1米ドル=6人民元突破を目指して上昇トレンドを描き続けた人民元が下落基調に転じ、現在では1米ドル=7人民元を突破して人民元が一層軟化することを中国人民銀行が許すのかが世界的関心事になっています。

 

こうした人民元の価値に対する懐疑は中国公民にも広がっていることから、もしも従前どおり、外貨送金の名目を偽り、中国国内不動産を売却して得た人民元が外貨に違法に換金され、それが海外不動産に違法投資することの横行を許せば、都市部の不動産投資で儲けた富裕層は一斉にアメリカを中心とする不動産投資に走ることは150%の確率で確実です(米中貿易戦争があっても、結局、中国公民はアメリカが大好きで、アメリカ経済を信用しています)。

 

そうなると、中国の保有する外貨は一気に対外流出し、中国国内不動産の価格は急落し、中国公民も企業もまだまだ価値上昇すると信じて過剰債務を抱えて投資してきた例も枚挙にいとまがないところ、その過剰債務がすべて不良債権化し、上場企業である四大国有商業銀行のバランスシートの巨額棄損を引き起こせば、中国経済が阿鼻叫喚になるどころか、日欧米の一部が望むとおり、圧倒的多数の中国公民と企業経営者の中共中央に対する爆発的な批判が巻き起こり、国家と社会の安定は全土で危機を迎えます。

 

以上が刑法まで利用して、中国が海外不動産投資の阻止を図る理由です。

 

こうして、中国公民の財産権行使としての海外不動産投資の自由は、これを認めると現在の政治体制の崩壊につながりかねないという公益上の理由で、過去も現在も未来も絶対に緩和されることがなく、全面禁止が継続するであろうと予想されるわけです。

 

日本円と国債の崩壊を防止する手段としての海外保険投資の規制と、中共中央が指導する政治体制の崩壊を防止する手段としての中国公民による海外不動産投資の規制を見ると、それぞれの国家において何がアキレス腱であるのかがよく見えると思うのです。

 

ちなみに、私見では、中共中央の政策決定権限は絶対であり、異論を許さない中国で海外不動産投資の規制に中国公民が不満を表明することが理由となり、それが規制緩和されることはないし、不法経営罪のペナルティを恐れずに、多数の中国公民が違法な海外不動産投資に走ることもないと確信しますが、年金支給が遅らされ、年老いても労働を強いられながら、不労所得で老後の安心を確立する手段を厳格に制約する保険業法を中核とする日本の法システムによる国民の財産権に対する不合理な規制に多数の国民が気づき、「背に腹は代えられない」として、多数の国民が(適法か違法かは別として)海外保険商品購入に走り、その結果、家計資産残高を急減させる挙動(=投資金元本が事実上守られるどころか、年数により2倍、3倍以上になる海外保険商品の購入)をとる未来は、ネット情報の流通の速さと正比例する国民の無知解消速度の上昇により、意外に早く訪れるかもしれない、と予想しています。

 

それが日本円と国債の崩壊、そして海外保険商品の活用ができる国民とそれ以外の国民への分断=それが起きないと言われてきた日本における極端な貧富の差の拡大を現実化させることがなければよいのですが・・・(私は、日本国民が集団として明確に意識するところまでに現在至っていないにせよ、集団的な不満、不安の種は既に発芽し、すくすくと育ちつつあると感じていますので、これが決して杞憂ではないと思っています)。

 

 

レッスルワンの芦野祥太郎選手とは何度も食事をご一緒させていただいているが(そして、ブログで写真を掲載する許可もしてくれている)、大技を見舞われ、チャンピオンから陥落したその日でも、絶対に約束した食事会には平然と参加し、メンタルも一切ぶれずに、堂々と振る舞う。その試合ぶりも昭和の香りが満載のストロングスタイルだが、その人間としての立ち居振る舞いも正統派の極みだ。イケメン“黒潮”二郎がフリー化した今、レッスルワンを牽引して、さらなる人気団体に育てて欲しい。歴史伝統的に黄金時代を迎える新日本プロレスの選手も大好きだが、レッスルワン、そして芦野祥太郎選手には固有の魅力がある。男前だし、棚橋選手に続いて、映画デビューに誰か誘ってあげてくれないだろうか・・・。

 

以上


■筆者: 村尾龍雄■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト 代表弁護士・税理士
香港ソリシター(LI&PARTNERS(香港)所属)
キャストコンサルティング株式会社 代表取締役
加施徳咨詢(上海)有限公司 監事
加施徳投資香港有限公司 董事
キャストグループ   キャスト中国ビジネス
■東京/大阪/埼玉/上海/北京/蘇州/広州/香港/ヤンゴン/ホーチミン■----------------



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