四面楚歌を脱却できるか、中国

            

米中貿易戦争は二国間にととまらず、安全保障上の懸念から日本を含む先進諸国がファーウェイ通信設備の排除に動くなど、四面楚歌の様相を呈しています。

 

四面楚歌の参加者には、先進諸国のみならず、一帯一路の対象国である多数の発展途上国も含まれていますから、一部例外的な親中国もありますが、オセロが一気に中国に不利な色に転じていく有様です。

 

応援団は、ロシアや北朝鮮など、世界的に見て非主流派の国家だけで、中国にとって現在の状況は決してプラスにならないように思えます。

 

中国と中国人にお世話になり、個人的にもグループ的にも現在の「馬馬虎虎(まあまあ)」の状況を形成できたという感謝の念が強い私は、当然のことながら現在の状況に大いに心を痛めています。

 

しかし、なぜ中国が四面楚歌的状況に直面せざるを得ないことになったのでしょうか?

 

ある者が短期間に四面楚歌的状況に陥るには、その者が平素から他の大多数から嫌われている素地があることが必要で、ある日突然、ガキ大将(=アメリカ)が皆から愛されている者を四面楚歌にせよと命じるだけで、決して四面楚歌的状況に陥るものではありません。

 

皆から愛される者には、必ず複数の擁護者が生まれるからです。

 

そうすると、米中貿易戦争に端を発して、世界的な嫌中ブームが一気に広がりを見せた背景として、実は中国が先進諸国のみならず、発展途上国にまでもが中国を嫌うとまで言わずとも、快く思われない素地があったはずだという仮説が成り立ちます。

 

その理由として論者により多種多様な想定があり得るでしょうけれども、私見では中国人の中央政府、国有企業、民間企業を問わない共通の行動パターンがその最大の原因となっているに違いがない、と考えています。

 

では、その共通の行動パターンとは何かが問題となりますが、「相手方国及び相手方企業のトップしか相手にせず、トップさえ押さえてしまえば、それで物事はすべて順調に進む」という中国的確信(=外交的文脈では誤信)に基づく行動パターンです。

 

 

 

 

その意味をもう少し詳しく解説しましょう。

 

中国は西欧型民主主義こそ採用しないものの、自分たちは中国流民主制を採用していると自負します。

 

では、中国流民主制とは何かと問うと、それは民主集中制という言葉で表現されます。ここに民主集中制とは、結論を下す前に様々な人々の意見を徴求するけれども(=民主制)、それに基づいて最終的には1人が決断を下す権限を持つこと(=集中制)を本質とします。

 

これを国家体制にあてはめると、中共中央は政策を立案する前に、党組織及び国家組織を通じて様々な人々の意見を徴求し、情報を収集し、それを熱心に分析するけれども、複数の可能的選択肢のうちどれを採用するかを決定する権限は全て中共中央が掌握しており、国家も企業も全て民主的プロセスを通じて意見、情報を集約したうえで決定された中共中央の指導に従う責務を負う、というわけです。

 

これが社会主義国家体制の特性である以上、外交を展開する場合にも、「相手方国及び相手方企業のトップしか相手にせず、トップさえ押さえてしまえば、それで物事はすべて順調に進む」という中国的確信(=外交的文脈では誤信)が生まれるのです。

 

もちろん、中共中央の幹部は長い時間をかけてリーダーの資質を有するかどうかを多様な観点と多様な人々により観察され、その結果、頂点に上り詰めてきた人々ですから、とても優秀で、頭では外国、特に先進諸国においては西欧型民主主義が採用されており、政府や党の指導で物事が動くわけではないということを理解しているはずですが、しかし、感情的になる場面、例えば日本のマスコミが中国を必要以上に非難する論調を続けるような場合、業を煮やした中共中央や中央政府が自民党や内閣に対して、「あなたがたの適切な指導でアンフェアな報道を続ける日本のマスコミの論調を改善するようにして欲しい」という申入れをしてくる例があるのは、結局、中国の民主集中制のもとで染みついた思考癖は外交場面でも決して抜け切ることがないことを示しています。

 

その結果、西欧型民主主義を採用しないか、しているとしても、その機能が脆弱な相手方国に対する外交ともなると、相手方国の権力者だけを掌握し、後は一部が賄賂として権力者に還流するであろう莫大な経済援助(といっても貸付形式)を餌に、港湾開発権を手中にすると、その建設工事の設計、調達、施工は100%中国企業(=変形した財政出動で中国GDPの押上げ効果を図る)で、工事従事者も100%中国から連れていき(=雇用安定策の一環)、相手方国の民衆は「お前らのボス(=権力者)と握っているのだから、向こうへ行け。シッシッ」という「下にしか置かない」扱いをするのですから、そりゃ、嫌われます。

 

結局、中国が国際社会で注目を浴びるようになる契機であったWTO加盟(2001年12月11日)から18年しか経過しない中で、個人の名目GDPが10倍にまで跳ね上がった経済成長を背景とする成金的傲慢心が小平の貴重な遺言であった韬光养晦(能ある鷹は爪を隠す)政策を捨てさせ、中国の外交戦略が謙虚さを失う中で、民主集中制に起因する極端なトップダウン発想に基づく不合理な行動を頻発させ、それが短期間で現在に至る四面楚歌的状況の素地を形成した、といえるでしょう。

 

もしも2018年に、米中貿易戦争が勃発しておらず、アメリカが同盟国に対して安全保障面での警戒を呼び掛けていなかったならば、民主集中制に起因する極端なトップダウン発想に基づいて、最早、世界各国で相手にするに値する唯一の国家はアメリカだけであり、そのトップであるトランプ大統領のご機嫌だけをとっていれば大丈夫という行動をとっていたはずです。

 

南シナ海の人工島化のみならず、尖閣諸島への解放軍上陸を含む近隣の支配を可能にするためのアメリカと中国による太平洋二分化計画の提案も、こうした文脈で理解すれば、中共中央の自然な発想として納得しやすいというものです。

 

現在の四面楚歌的状況から脱却し、「世界から愛される中国」になるための唯一の手段は、「なぜ、中国は現在のような状況に陥ったのか?」を謙虚に反省し、社会主義市場経済導入がなされた1992年以降、なぜ中国がこれほど発展したかについて、決して自助努力だけではなく、そこにアメリカと日本の莫大な支援があったことを謙虚に思い出し、遅ればせながら、偉大な小平の遺言である韬光养晦政策に再び回帰することが必要であろうと思うのです。

 

それだけではなく、権力者だけを抱え込めばそれでおしまいではなく、相手方国の民衆にもどうすれば愛されるのかを徹底して謙虚に考え抜いて、それを展開する新たな外交姿勢を忍耐強く示していくしかありません。

 

世界的な中国への期待が嫌悪に変ずるまでに要した時間は僅か数年。失った信用を同期間で取り戻せるとは思いませんが、その何倍かの時間をかけさえすれば、「世界から愛される中国」に必ずなれるであろうと思います。

 

2019年以降、早い段階で、外交姿勢を大胆に転換しなければ、中国経済の落ち込みぶりはひどくなり、多種多様な金融政策を切れる今から5年〜10年はまだ大丈夫かもしれませんが、その後は国家及び社会の不安定を招来するリスクさえあると見ます。

 

決定権限と表裏一体で、決定に誤りがあると認める場合の全責任が決定権限を有する者に集中する民主集中制特有の「自我批评(自己批判)」を困難にする特徴を中国が乗り越える勇気を持てるか否かに、国家の未来がかかっているとさえいえると思う次第です。

 

勇気を持って、変われ、中国!

 

 

1月2日午後に、翌日の箱根駅伝を直接応援に行くと言い残し、妻と娘が東京に行ったので、仕方がなく、同日夜に西宮市の自宅近くのステーキの名店(ペイザン)に息子と2人で出かけた。2日なのに、店内は満席。次々に一気に焼かれる神戸牛などを見るほうでも堪能した。人気店なので、神戸牛1頭買いをしたとかで、ご主人は通常値段で神戸牛のシャトーブリアンをご馳走してくれた。おそらく、こんなの、帝国ホテルの「嘉門」とかオークラの「さざんか」で食べたら(=品数が確保できないので、メニューに載ることはあり得ないが)、1人10万円くらいとられるかもしれない。年初から幸先がいい(喜)。

 

以上

 

■筆者: 村尾龍雄■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト 代表弁護士・税理士
香港ソリシター(LI&PARTNERS(香港)所属)
キャストコンサルティング株式会社 代表取締役
加施徳咨詢(上海)有限公司 監事
加施徳投資香港有限公司 董事
キャストグループ   キャスト中国ビジネス
■東京/大阪/埼玉/上海/北京/蘇州/広州/香港/ヤンゴン/ホーチミン■----------------



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