弁護士事務所の営業戦略(2)−サービス紹介の強化

            

「クレクレ星人」を撲滅したとしても、それだけでは「守り」にはなっても、「攻め」の要素がありません。

 

そこで、次に「攻め」の要素をどうするかが問題になります。

 

これについての私見は、時間がかかっても、自分たちが提供できるサービス紹介をきめ細かく丁寧にやっていくことに尽きると考えます。

 

こう聞くと、「何を当たり前のことを」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には私たちを含め、これが完全又は完全に近い形でできている弁護士事務所などほぼないのではないか、と思います。

 

例えば「営業」と聞くと、人が集まりそうなところにこまめに顔を出して、名刺を配りまくることを「営業」だと誤解する弁護士が特に若い方に多いように思いますが、弁護士の肩書きが今ほど陳腐化し、今ほど凋落している時代は過去にないのですから、いかなるサービスを提供できるのか不明の弁護士の名刺を1万枚撒いたとしても、それで仕事につながる可能性は絶無に等しいと思います。

 

そこで、まず自分たちが提供できる差別化されたサービスを充実させることを前提として(INPUT)、それをいかに世の中に(特に仕事をもってきてくれる有力者に)訴求できるか(OUTPUT)こそが営業の王道となると考えます(INPUTとOUTPUTの連鎖的循環)。

 

その意味で「本を執筆する」、「論文を投稿する」、「ネットで情報提供をする」、「一般向けセミナーを開催する」、「クライアント向けクローズドセミナーを開催する」などの努力は大変有意義には違いありません。

 

しかし、どの選択肢もある時期に旬であるテーマを選択し、それに関する十分な情報収集をし、これを途切れることなく発表していくのは「言うは易し、行うは難し」の典型で、特に数百人の弁護士を抱える五大法律事務所クラスならば、これを組織的に対応することで実践することは容易でしょうけれども、私たちを含む中堅・中小規模の組織になると、なかなか容易ではありません。

 

それでも「クレクレ星人」を撲滅できていると、私たちを含む中堅・中小規模の組織では、かかる努力を通じてある程度大きな仕事が舞い込むと、途端にこの規模なりの組織として比較的大きな利益を安定計上できるようになりますから、いかなる困難があろうとも、OUTPUT努力を継続するほか選択肢がありません。

 

これを私の場合で言うと、今のところ不定期にブログを執筆して主として中国関係のお話を一般向けにして(これがOUTPUTとして有意義かどうかは不明ですが、クライアントで読んでくださる方がいるので、止められません)、今年は「国際商事法務」という専門誌に12ヶ月中10本論文を執筆することを決意し、昨日今年4本目を脱稿し(疲労困憊)、国際協力銀行の定期刊行物に論文を発表し(年3、4回)、SMBCの中国ビジネス関連のハンドブックを執筆したり監修したり、SMBCの中国ビジネスニュースに投稿したり、年6回程度のセミナーや講演を行うなどのOUTPUTをしています(特に論文は学者の書くものと異なり、実務的に有用な知恵を提供するものではあるものの、competitorが見るので、アホな内容にするわけにはいかないので、相当神経をすり減らします)。

 

それでもこれだけでは大好きではあるものの、最盛期との比較では斜陽傾向にある中国法関連ビジネスのみに傾斜した「歪んだ努力」になりかねませんので、日本でビジネスを行おうとする中国人向けの日本法の中国語情報発信や、香港法関連の情報発信、国際相続や国際離婚に関連する情報発信を継続的に実施していかなければなりません。

 

こうなると、日々の仕事をこなしながら、余った時間は全部INPUTとOUTPUTに向けた渾身の努力を繰り返す日々を送ることになるわけで、それはそれは肉体的にも精神的にも自らを相当追い込んでいくマゾヒスティックな努力が必要になります。

 

こう聞くと、「私は日々の仕事だけで一杯だから、これ以上の努力はできない」という反応を示す専門家が圧倒的多数になるのですが、だからこそ個人レベルでも組織レベルでも、この努力を継続的にやり切った者が勝つのです。

 

これだけ競争が激化する中で、誰でもそこそこの努力はしています。

 

それなのにその中で頭1つ抜け出して、クライアントから選ばれるだけの知恵を身につけ(INPUT)、それをアピールして(OUTPUT)実際に選んでもらうには、「普通の弁護士が一般的にやる努力」の2倍、3倍を励行しない限り、不可能だと思います。

 

オリンピックの100メートル決勝は皆が驚くほどの努力を重ねてきているのに、メダルを取れるのはたったの3人。しかし、1位と8位のタイム差は0.5秒もないわけです。

 

この0.5秒の差を常につけることができるためには、圧倒的な体力、圧倒的な精神力を前提として、そして圧倒的な努力を継続するほかないと思うのです。

 

これは私の理想であり、私も達成できていないものではありますが、この道理は職業如何を問わず、古今東西の如何を問わず、絶対的な真理だと思います。

 

「守り」としての「クレクレ星人」の撲滅、「攻め」としてのINPUTとOUTPUTの連鎖的循環をやり抜くこと。

 

この2つが弁護士事務所受難の時代における唯一の生き残り策だと確信します。

 

 

今朝の上海は空気が比較的きれいだ。青空が青空として楽しめる。ところで、昨日上海の小学校の先生2人を面接して、1人を家庭教師として雇うことに決めた。WeChatで週2回のペースで授業を受ける。「なぜ小学校?」と言うかもしれないが、小学校5年間(6年ではない)で中国人は5000もの漢字を習うという。しかし、残念ながら私はそれを全部書けない(合弁契約ならば何も見ないで、20ページの中国語契約を起案できるのに)。ならば、自分の中国語の穴を埋めていくには、まず小学校の教科書を全部やって、全部の漢字を覚えるようにするのが最善だ。その後、中学校、高校の教科書を全部やる。曲がりなりにもビジネスでは通訳をやっていても何の問題もないが、中国語は何としても一層完全なものにしたい。語学学習にもゴキブリのような執念が必要だ。

 

以上

 

 

■筆者: 村尾龍雄■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト 代表弁護士・税理士
登録外国弁護士(日本法)(LI&PARTNERS(香港)所属)
キャストコンサルティング株式会社 代表取締役
加施徳咨詢(上海)有限公司 監事
加施徳投資香港有限公司 董事
キャストグループ   キャスト中国ビジネス
■東京/大阪/上海/北京/蘇州/広州/香港/ヤンゴン/ホーチミン■----------------------



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